電子署名

2019年9月2日

電磁的記録の定義

電磁的記録・電子署名要件の対応といったときに、Electronic Records(電子記録)と電磁的記録(electro-magnetic records)は同じようなものとして使っています。今回は、それぞれの定義を見てみましょう。

 

電子記録とは

Part 11[1]ではElectronic Records(電子記録)を11.3(6)で以下のように定義しています。

「電子記録とは、コンピュータ・システムによって作成、修正、維持管理、保管、取出または配信されるテキスト、グラフィック、データ、音声、画像、その他任意の情報の組み合わせをデジタル形式で表現したものをいう。」

まあ、そんなもんかな、というところですよね。

 

Scope & Applicationによる狭義の解釈

確かに、電子記録の定義はこのとおりですが、この電子記録の定義に当てはまるもの全てにPart 11を適用してよいのでしょうか?

使っているシステムに電子記録がある。
従って、Part 11が適用される。
従って、当該システムはバリデートすること。監査証跡も実装する。
人事システムとか会計システムもPart 11が適用されるのはおかしいでしょ?
そもそも、これってGxPのものでしょ?

ということで、2003年にScope & Application ガイド[2]が発行され、電子記録を狭義に解釈することを明言しました。以下、「プレディケート・ルール」は最近の言い方に合わせてGxPと読み替えて頂けばよいと思います。

  • プレディケート・ルール要件の下で維持管理が求められている記録で、紙形式の代替として電子形式で維持管理されているもの。それに対し、プレディケート・ルールの下で保持の対象となっていない記録(及び関連する署名)は、電子形式で維持管理されていても、Part 11記録とはならない。
  • 特定の記録がPart 11記録となるか否かをプレディケート・ルールに基づいて判断することを推奨する。また、こうした判断を文書で記録しておくことを推奨する。
  • プレディケート・ルールの下で維持管理が求められている記録で、紙形式に加え電子形式でも維持管理されており、電子形式の記録が規制対象の作業を行う拠り所となっているもの。

 

電磁的記録とは

その後、2005年に厚生労働省からER/ES指針[3]が発行されました。ここでいう電磁的記録は、時期的に、上記の議論を踏まえたものと考えてよいかと思います。

さて、それではER/ES指針における電磁的記録の定義を見てみましょう…と。

実はER/ES指針には電磁的記録の定義がありません。
それでは電磁的記録の定義どこにあるのでしょう?
正解は2000年のe文書法[4]でした。

このe文書法の第二条四に電磁的記録
「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう」
となっています。
電磁的記録は、そもそもが「人の知覚によっては認識することができない」ものなので、ER/ES指針3.1.2で見読性を求める「電磁的記録の内容を人が読める形式で出力(ディスプレイ装置への表示、紙への印刷、電磁的記録媒体へのコピー等)ができること。」という条文につながります。


― 参考文献 ―

[1] United States Code of Federal Regulations Title 21, Part 11 “Electronic Records; Electronic Signatures”, 1997【和訳】(A)

[2] U.S. FDA, Guidance for Industry, “Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures – Scope and Application”, 2003【和訳】(A)

[3] 医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について, 平成17年4月1日, 薬食発第0401022号【英訳】(A)

[4] e文書法:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律,平成16年法律第149号

【注】
(A) : アズビル株式会社様が翻訳したものです。
アズビル株式会社様には、本サイトで掲載することをご承諾いただいております。