電子カルテのデータついて各極当局の期待

電子カルテのデータを治験で用いるためには、データの信頼性が確保されていなくてはなりません。各極の当局は、この件についてどのように考えているか整理してみました。

FDA

FDAは電子形式で原データを取得することを促進すべく、2016年に“Electronic Source Data in Clinical Investigations” ガイダンス[1]を発行しています。このガイダンスで、 電子カルテシステムからデータを転送する場合は、電子カルテが原データとなること、そして原データの信頼性、品質、完全性を確実なものとするために適切な管理が施されるべきであることを明確にしました。

続いて2018年7月に発行されたガイダンス“Use of Electronic Health Record Data in Clinical Investigations” [2] で、さらに要件を具体化し、治験依頼者と実施医療機関の協力のもと、電子カルテシステムとEDCシステムの相互運用・統合することを推奨しています。EDCシステムの接続相手として、ONC(The Office of the National Coordinator for Health Information Technology)に認証された電子カルテシステムが望ましいとしています。ONC認証を受けていない電子カルテシステムと接続する場合は、セキュリティや監査証跡の要件を確認するよう求めています。

なお、FDAは電子カルテシステム自体の21 CFR part 11への適合性を評価する意図はないものの、治験依頼者が使用するEDCシステムは、21 CFR part 11への適合性を評価することを明らかにしています。従って、査察時には、治験に関する電子カルテシステムの関連情報のオリジナル記録または保証付き複写を提供するよう要請される可能性があります。

 

EMA

2010年8月に発効したEMAの“ Reflection paper on expectations for electronic source data and data transcribed to electronic data collection tools in clinical trials”ガイダンス[3]では、電子カルテシステムがGCP要件をどの程度満足しているかを判断するために、アセスメントを実施し、必要な是正措置を講じるべきとしています。

同ガイダンスでは以下のような評価項目の例を挙げています。

  • 電子カルテが変更される可能性はないか?監査証跡はあるか?
  • 被験者ではない患者の医療記録にはアクセスできないようになっているか?
  • 電子カルテの複写が完全で正確な複写であることを検証できるか?

なお、EMAは近々このガイダンスの改訂を検討しており、eClinical Forumを含む業界団体との意見交換を進めているようです。

 

厚生労働省

厚生労働省は、2014年の「「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方」の 一部改正について」[4]において、電子カルテシステムを導入している実施医療機関では「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」[5]を遵守して運用されているものと捉え、実施医療機関で作成した治験関連文書(診療録・検査伝票・同意説明文書等)を電磁的記録として保存することが可能であるとしています。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は2017年に第5版が発行されており、実施医療機関に対して、医療情報システムの安全管理やe-文書法への適切な対応を行うため、技術的及び運用管理上の観点から所要の対策を示しています。

このガイドラインには、電磁的記録・電子署名要件も盛り込まれており、セキュリティ要件なども詳細に定められています。ただし、コンピュータ化システムバリデーションという言葉は出てこず、実施医療機関側の責任のもとでバリデートするというよりも、請負事業者を適切に管理監督することに重点が置かれているように思えます。

このガイドラインを遵守していれば、電子カルテの安全性や信頼性は確保できそうですが、このガイドラインには強制力がないため、どこまで対応するかは実施医療機関次第となっています。


― 参考文献 ―
[1] U.S.FDA,Guidance for Industry, “Electronic Source Data in Clinical Investigations”, 2013【和訳】(A)

[2] U.S.FDA,Guidance for Industry, “Use of Electronic Health Record Data in Clinical Investigations”, June 2018

[3] European Medicines Agency, Reflection paper on expectations for electronic source data and data transcribed to electronic data collection tools in clinical trials, 2010【和訳】(A)

[4] 厚生労働省医薬食品局審査管理課, 「「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方」の 一部改正について」,2014

[5] 厚生労働省, 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版, 2017

【注】
(A) : アズビル株式会社様が翻訳したものです。
アズビル株式会社様には、本サイトで掲載することをご承諾いただいております。